一番好きな作家を問われると岡嶋二人というのは不変で、どの作品も甲乙付けがたいくらい好きだけれど
もし誰かに「どうしてもオススメのミステリーを教えてくれ」と請われれば
一番に倉知淳の「星降り山荘の殺人」を。
そして次に我孫子武丸の「殺戮にいたる病」を挙げてしまう。
そんな我孫子氏の「弥勒の掌」
意外性を期待すれば読後感は二の次になるのかもしれない。
読み始める以前から帯と背表紙で散々"意外な結末"を強調してるんで当然期待。
騙されないようにしよう等とは思わない、どんな風に鮮やかに騙してくれるかを期待。
確かに騙されました。
でも酷い裏切りではないんですね。
序盤から感情移入出来ない主人公だったからかもしれません。
主人公に感情移入していれば酷い裏切りに思えたでしょう。
でも感情移入出来るような主人公ならこんな風に裏切るはずもなかったから
やはり感情移入出来ないのは正しかったわけです。
あんまりいないと思うんだけど、この主人公に共感出来る人が読めば
これって全然違った読後感を抱くのかなー。
作者は明らかに好感を得られない人物を描いていると思うんだけど
人の価値観は様々だから、もしかしたら共感する人がいても不思議ではないのかも。
そんな風に考えると色んな物事が受け手次第だというのが怖くなりますね。
とか思ってたらタイムリーな事に、万引きの犯罪性啓発の為に描かれた漫画をお手本に
万引きしてた中学生が捕まりましたよ。
犯罪啓発のつもりが犯罪助長に繋がるとは漫画家も脱力でしょうな。
脱力どころかもう何も表現出来なくなるくらい怖い話かもしれん。