「名もなき毒」
「誰か―Somebody」の続編。杉村三郎シリーズ?
前作同様、いくつかの事件が絡まり合って最後に一気に解決する内容。
全体的に重苦しい雰囲気。
逆玉の輿の主人公が夫婦仲も良く、お互い思い合っていながらも
金銭的な事に関する価値観の違いに心を燻らせている辺り。
幼稚園児の娘を挟んで家族団らんほのぼのシーンのはずなのに
どうしても闇がつきまとって、ただ幸せなだけの家族には見えない。
「パンがなければお菓子を食べればいいじゃないの?」
素でこういう感覚の持ち主と、貧困に喘がずとも一般的な家庭で育った人間とが
相容れられるわけがない。誰も悪くないけれど上手くいかない想いはある。
毒は毒物混入無差別殺人の毒ではなく、
悪意のない人間から吐き出される毒。
毒を吐こうと思って毒を吐いている人は実際はそんなに多くなくて、
本人は毒を吐いていることに気付かないまま、毒をまき散らしている事が多い。
イヤミを言うつもりでイヤミを言っている人の方が
無意識にイヤミを言う人よりマシだと思う。
自覚がないということは、自主的な変化もないということで、
本人に自覚がないまま、毒を垂れ流し続けるだけだから。
毒を受けている自覚がないのも怖い。
きっとそれは澱のように消えることなく、流れていくことなく、
ゆっくりゆっくり心の中に沈んでいくのだろうから。
気付いたときには、もう取り返しの付かないことになっている、かもしれない。