久しぶりの綾辻氏です。「最後の記憶」
幻想&叙情系ホラー。
母親が白髪痴呆【蓑浦=レマート症候群(新しい記憶の強度の薄い記憶から徐々に失い律儀に過去へ遡っていく。発症後白髪化)】に冒され、
その病が遺伝するかもしれないというコトに怯える主人公の描写と
病のせいで殆どの記憶を失いつつある母親に残された「凄まじい恐怖の記憶」の謎がメイン。
幻想ホラーということで謎の解決自体はファンタジー(幻想)。しかもありがち。
でも解決以前の主人公の描写はリアルでヨカッタ。
精神崩壊一歩手前なのに妙に冷静に自己分析してる辺り。
私自身が主人公の感じる恐怖に共感しやすさがあったことも大きい。
何に恐怖するかは人それぞれだけど
私は死んで完全に動かなくなってしまい、一切思考も出来ないことよりも、
自分が自分でなくなってなお、命があり言動している方が遙かに怖いと思うので。
どちらが一般的で多数派なのかは知りません。
あと母親の心配よりも自己保身の感情が優先される辺りとか
そういう利己性に嫌悪感を抱く辺りとか、リアルな人間像に見えるのは
私が利己的な人間だから?(苦笑)
ただ、徐々に記憶を失い過去の凄まじい恐怖の記憶だけが残り、常に怯えている状態になる「怖さ」が
イマイチ理解できなかったのでこの話の根本的な怖さは実感できなかったかも。
どんどん記憶がなくなって、近しい人間の事も判らなくなって、思考力もなくなって
そこに恐怖の記憶だけが残ったら、それは他の記憶があるときよりもどんどん鮮明になっていくのか?
それともやはりぼんやりと恐怖の感情だけが強調された古い記憶のままなのか、
そんなことを考えていたら想像力が力尽きてしまった(苦笑)
「生きているのは楽しい?」
作中、何度も主人公に繰り返される問いかけ。
答えに詰まる。
「生きているのが楽しい」はちょっと違う気がするから。
SHINOさん、こんばんは。
同じことを言われたら、私なら
「楽しいだけの生活(人生)はあり得ないが、素晴らしい生活(人生)を送ることはできるはず」
と答えて精神崩壊は免れたいですね。
最近、日本の世界最高齢おじいちゃんが、ギネス登録されてインタビューを受けた様子を放映していましたが、記者の質問に「まだ死にたくないね」と一言答えたのが、とても印象的でした。
話がそれてしまいましたが、この記事を読んで「人間の尊厳」と「生への渇望」の二つのキーワードが思い浮かび、つらつらとコメントしてしまいました。
考え過ぎ? (^^ゞ
「人間の尊厳」と「生への渇望」は多分、この作品のキーワードではなく
私自身が作品を読んだ結果、脱線した思考のキーワードでしょうね(苦笑)
私は「人間の尊厳」は凄く大事だと思ってるから
認知症の話なんか読むとどうしても「安楽死許可希望」へと思考が向かいます。
だから「生への渇望」は私にはあまりないと思いますが
「生への渇望」が激しい人を思い浮かべながら読んでいたので
結果そういう私の思考がダダ漏れの文章になったんでしょう(笑)
「まだ死にたくない」と答えられるくらい脳が丈夫なまま生き続けたいです。
Posted by: SHINO : 2007年07月04日 13:03