Naoki氏が友人から借りてきたと言って貸してくれたので読んでみた。『"It"と呼ばれた子』
(未読の方ゴメンナサイ。ネタバレ?アリです)
米国の元被虐待児が書いた『児童虐待の実話』
昨秋既に文庫化済み、1時間程度で読める本なので興味ある方はどうぞ。
(ディヴ・ペルザー著 田栗美奈子訳 『"It"と呼ばれた子(幼児期)=A Child Called"It"=』 ヴィレッジブックス)
裏表紙には「米国カリフォルニア州史上最悪といわれた虐待を生き抜いた著者が、幼児期のトラウマを乗り越えて自らつづった、貴重な真実の記録」とある。
事実、まず「よく生き延びられたなぁ」と思える内容だった。
虐待は著者が4~5歳の頃から初めはひっそりと徐々に露骨に行われたらしい。著者は3人兄弟(後に5人兄弟になる)の真ん中、兄弟の中で唯一虐待を受けていた。
ガスコンロで焼かれる。
塩酸で掃除をさせられる。
乳児の汚物を食べさせられる。
帯に書かれていた虐待内容が以上。当然これ以上の虐待もされている。
Naoki氏の感想は「可哀相」としか聞いていないが、彼と彼にコレを貸した友人は何を思いながら読んだんだろう…。
虐待が始まるまでは完璧すぎるほど完璧だった母親が、豹変したのは何故だろう。
何故、兄弟の中で彼だけが虐待を受けたのだろう。著者曰く「声が大きく、要領が悪かったから」らしいが。
父親は最初こそ彼の味方をしていたが徐々に見捨てたのは何故だろう。そもそも何故、妻の非人道的な行いに表だって抗議できなかったのか。
妻の行いが明らかに異常であることを認知していながら、我が子が死線を彷徨うような虐待を受けているのが解っていながら、その後二人も子供を作ったのは何故だろう。
加害者の母親は確かに異常だが、それを黙認してしまった父親に納得できない。
虐待の事実を知りながらなお子供を二人も作ったことに嫌悪感を抱く。
彼の母親に訊いてみたい。「何故彼だけが『あのこ』ではなく『それ』になってしまったのか」
彼の父親に訊いてみたい。「何故彼を救えなかったのか」
彼の兄弟に訊いてみたい。「何故彼に憐憫の気持ちさえ持てず嘲笑できたのか」
現代の日本では「虐待を受けている子供を見たら通報する義務」があるので、この本の内容のような露骨な虐待はないかもしれないが、やはりひっそりと虐待は行われているし、命をなくす子も後を絶たない。
勿論、虐待がなくなるのが一番良いのだけれど、せめて虐待を受けても生き延びた子は「虐待の輪廻」を断ち切って、健全に生き続けていけるようにココロのケアが充実した世の中になりますように…。
彼は強い。
母親に殺されそうな目に遭っているのに『その同じ母親に愛されている赤ん坊の末弟』を見て「カワイイ」と思い「ココロが癒される」と語る。
この強さがあるから、彼は生き延びて、自分の息子を愛する立場になれたのだろう。
素直に尊敬した。