『チグリスとユーフラテス』新井素子のSF小説です。1999年2月刊行の本ですが私は文庫派なので最近やっと読みました。
新井素子は私が推理小説家以外で唯一著作を全部読んでいる作家です。
彼女の文体は読みやすくて、人間関係の描写が秀逸だと思います。
この作品は解説(大沢在昌)によると『神』について書かれた話だそうです。
私にとっては人生の意義について考えさせられる作品でした。
『種』としての意義。『個』としての意義。
『種』としては"種の保存"というのが命題だと思っていました。
『個』として子を成せない個体も社会を構成する一員として種の保存の為に貢献していると思うし。
(読後の今もやはり私はこう思っていて、だからこの物語は私にとっては『神』の話にはなり得ないのかもしれない)
しかし、この物語の中の人類は絶滅寸前、ほぼ絶滅していると言って良い状態にあります。
『最後の子供』が存在する世界。『最後の子供』だけしか存在しない世界。
彼女(女性です)の母は何故彼女を産んだのか、彼女は何のために生きているのか。
その答えを求める話です。
『種』としては"種の保存"が命題だと思う私には、持てる想像力の全てを駆使しても思いつかない話だなぁと思うし、
『個』としては"人生楽しんだ者勝ち"と思っている私は妙に納得させられたりするし…。
自分の中で消化されきってないので中途半端な感想文になりましたが(^^;
色々考えさせられる楽しい話でした。
作者自身に子供がいないというのも微妙ですね。
出来れば母になる前に読んで、母になってから読み直したかったです。
一度母になってしまうと"母としての思考"しか出来なくなってしまう。
それは喜ばしい事であり、ある意味切ない事でもある。
母はいつも切ない。
私にはこの物語の中の女性のような強い生き方は出来ない。