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■RedHat Linux on FIVA 206VL

CASIO CASSIOPEIA FIVA MPC-206VL 2001.8 入手

・"看板に偽りあり"

タイトルから「206VL での RedHat Linux 活用事例」等と思われる方もいらっしゃるかもしれないので、最初に断っておく。今回の主な内容は、前回から引き続いて CASIO Linux を何とか有効に使えないか、と模索した記録である。

・大きな勘違い

前回書いた通り、206VL への CASIO Linux ディスクイメージ書き込みは問題なく成功した。問題はこのままではトータルで 400MB の領域しか使えないことだ。FIVA-ML や guestbook に 400MB 以上の領域への書き込み方が色々掲載されていた。Linux のコマンド dd を使うと書き込めるらしい。とりあえず dd は最終手段とし、まず正攻法から試してみた。まず、206VL に入っているコマンド MKLXPART で通常 400MB のところ 2GB 確保。そして RDUXIMG で書き込んでみたが認識されたのはやはり 400MB だけだった。残りの 1.6MB はどこへいったのだろう。その後、ディスクダンプエディタというソフトで書き込んでみたが結果は同じ。ここで私は大きな勘違いをしていることに気がついた。dd にしても ディスクダンプエディタにしても、そして RDUXIMG にしても、400MB 以上の領域にかきこめるだけで、ディスクイメージとして出来上がっている CASIO Linux の使用可能領域を 400MB 以上に増やせる訳ではないのである。冷静に考えてみれば当たり前の話なのだが。結局、2GB の領域は 400MB と 1.6GB に分割し、400MB に CASIO Linux のイメージを書き込んで、そこから 1.6GB の領域をマウントすることにした。しかし、guestbook のアドバイスを見ても上手くできない。どうもコマンドが足りないようだ。

・"先生"登場

ここで私はとある人物の存在を思い出した。森野さんが主宰される OAZO FACTORY のメンバーである西垣さんだ。西垣さんには仕事上で必要な開発をお願いしている。Linux のサーバメンテの仕事もなさっていて Linux にはかなり詳しいとのこと。私は西垣さんに今回のいきさつを話して協力をお願いした。西垣さんは快く引き受けてくださり、家に来て作業をしてもらうことになった。

・一筋縄ではいかない

実際のところ、西垣さんが作業された内容について全てを理解している訳ではない。とりあえず CASIO Linux から西垣さんが管理するサーバへ Telnet で接続し足りないコマンドのバイナリをコピーし、CASIO Linux で動くようにしていく、これの繰り返しだ。途中 Kterm のシェルを bash に変えていただいたりしながら、何とか CASIO Linux 上から 1.6GB の領域のマウントに成功した。西垣さんが苦労されていたのは自動マウントが上手く設定されない点だった。通常 Linux では fstab というファイルで自動マウントを定義するらしいが、CASIO Linux ではその設定が反映されないのだ。何とか /home/.SYSTEM/etc/init.d/mounts というファイルを探し当て、そこに自動マウントの設定を追加していただいた。このファイルで C ドライブ以外の Windows 上の FAT32 のドライブのマウントも定義されていた。これで、CASIO Linux 上でトータル 2GB の領域が使えるようになった。次に西垣さんにお願いしたのはコンパイラ、もしくは rpm の移植だった。CASIO の CASIO Linux にはライブラリはあるがコンパイラが無く、新たなソフトを追加するには実際に動いているバイナリを持ってくるしかなかった。しかし、gcc や rpm などの移植ができれば、単体でソフトの追加が可能となる。しかし時間の関係でこれらの移植は共に上手くいかなかった。幾つかのコマンドを移植してもらってこの日の作業は終了した。

・名案?

CASIO Linux は Midori Linux と RedHat Linux 7.1 をベースに作られている。となれば RedHat Linux のバイナリをコピーしてやれば CASIO Linux でも動くのではないだろうか? guestbook では Debian のバイナリをコピーして動いたという発言があった。しかし、我が家には RedHat Linux がインストールされた PC が無い。そこで思いついたのが、1.6GB の領域に RedHat Linux をインストールして、それを CASIO Linux 上からマウントすることだ。そうすれば必要なバイナリはいくらでもコピーできるのではないだろうか。早速行動に移すべく RedHat Linux 7.1 インストール CD の iso イメージのダウンロードを開始した。約 630MB の iso イメージを CD 二枚分ダウンロードしなければならなかったが、年末に Neural-Net の回線が光ファイバに切り替わっていたので、一枚分当たり四十分弱でダウンロードできた。

・素人の浅はかさ

インストールにはそれなりに苦労した。まず日本語でのインストールを選択すると何故か途中で転けてしまう。仕方ないので英語でのインストールを選択。今度は swap 領域に割り当てるパーティションがないといって怒られた。プライマリパーティションは既に四つ設定済みだったので、拡張領域の FAT16 900MB を分割して swap 用のパーティションを確保した。途中で CD-ROM を認識しなくなり結局 iso イメージを C ドライブに置いたりしながらなんとかインストールは完了した。そして起動、RedHat の LILO の画面が表示された…。迂闊といえばあまりに迂闊だった。モードスイッチを切り替えても RedHat のLILO が優先して起動されてしまう。これでは肝心の CASIO Linux が起動しない。困った私はまたも西垣さんに助言を求めた。西垣さんに MBR をリロードする方法を教わり、
dd if=/boot/boot.0300 of=/dev/hda bs=446 count=1
のコマンドで何とか、従来通りモードスイッチ切り替えにより Win2000 と CASIO Linux が起動するようになった。これで RedLinux バイナリ倉庫計画は何とか完了した。

・一応の成果と疑問

その後、またも西垣さんに助言をいただきながらバイナリやライブラリをコピーして、現在のところ、Lynx、Emacs、xmms が動いている。Linux に長けた人がこの環境を持っていればもっと多くのソフトを動かす事ができているだろう。今後は rpm や gcc の移植にチャレンジしたい。
しかし、今回の一連の作業で思ったことがある。今更ではあるが、Linux を真剣に使うなら CASIO Linux ではなく他のディストリビューションを使うべきだと思った。FIVA 2xx 系に PC-UNIX をインストールされた実績は数多い。CASIO Linux は自由にソフトの追加もできないし、スタンバイもハイバネーションもできない。FreeBSD 5-CURRENT 辺りではかなり実用的に使えるらしい。PC-UNIX を真面目に使いたい人は CASIO Linux をいじればいじるほど虚しくなってくるのではないだろうか。しかし、前回も書いたように私は PC-UNIX の使用に対して明確な目的を持っている訳ではない。さらに使う人が少ないなら、私くらいは真面目に使ってみようというひねくれた意識も働く。ということなので、もうしばらくは CASIO Linux と悪戦苦闘してみたいと思う。その中で私なりの PC-UNIX を使う目的が見つけられれば、と思う。